将来人口推計からみる今後の医療

最近話題の人口問題。10年以上前から警鐘が鳴らされていましたが、ようやく政治問題として取り扱われるようになったなという印象があります。 この秋には人口減少対策等を担当する「まち・ひと・しごと創生本部」が発足する見込みで、その実効性はさておいても、当面は政治的にホットであり続けるでしょう。

 

今回は、ちょっと業界人ぶって、人口減少が医療業の今後の需要にどう影響していくか、簡単に分析したのでご紹介しようと思います。

 

まず、日本の将来人口について簡単にご説明したいと思います。

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国立社会保障・人口問題研究所の中位推計では、2050年には総人口は1億人を割り込む見込みです。一方で 団塊世代が後期高齢者になる2025年ごろを境に、特に医療・介護を必要とする75歳以上人口はいったん小康状態になりますが、2040年ごろから団塊ジュニアの高齢化によってさらに高齢化率が高まっていきます。

このころには国民の4人に1人が後期高齢者という驚異的な状況に陥ることになり、”社会”を支えるためにも若年人口をどうやって維持していくかが問題 とされているわけです。

 

 もう少し小さい単位として、富山市の将来人口を見てみますと、5年刻みの推計なので少し見え方は違いますが、トレンドとしては全国とほぼ同じです。 

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今回は、この将来推計を基に、富山市の今後の医療需要を推計しました。 

※この推計はH23年の受療率をベースに推計したため、今後の医療政策・医療技術の変化と受療行動の変化を加味していない点にご留意ください。また、数値は特定の1日について医療機関を利用する患者数を推計したものです。 

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入院患者については、高齢者人口の増加に伴って着々と増加していく見込みとなりました。団塊世代が80代後半に差し掛かる2035年にピークを迎えます。

後期高齢者の約3割が要介護認定を受けているという統計があるように、後期高齢者は単に病気を抱えているだけでなく、それが日常生活に支障をきたしている場合もあります。今後は、入院時点ですでに介護が必要な人が入院したり、治療が終わっても介護サービスの支援がないと生活ができず、そのために退院できない人が増えたりすることが容易に予想されます。 

今は後期高齢者とそうでない人の比率はざっくり半々ですが、入院需要のピークを迎える2035年には2/3以上が後期高齢者。本人にとっても、家族にとっても、病院にとっても「入院して元気になってよかったですね」という牧歌的な話ではなるなる可能性が高い。 

これも業界ではよく言われることですが、「医療と介護の連携」とか「入院時点から退院後の生活を見据えた支援」とかといったものがますます求められてくるわけです。

 

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外来患者については、意外なことに2020年には早くも需要が頭打ちになるとの結果になりました。更に年が進めば2035年には2010年の水準を下回る見込みです。

外来利用が多い40代以降~前期高齢者の人口が頭打ちとなって全体の需要を押し下げているようです。

壮年層だけでなく、後期高齢者も2030年には需要のピークを迎えて後は縮小していきます。直感ですが、後期高齢者は元気な人なら医者にはかからないし、元気じゃない人は通院どころじゃなくて入院しているか介護施設に入っているか、ということではないでしょうか。 

 

こうやって見てみると、これからのクリニック経営はかなり難しい時代になりそうです。単に「じいちゃん、元気け~?」と言っているだけでは利用者は頭打ちになるのは確実。最近はクリニックでも高額な医療機器を入れているところが珍しくないですが、外来患者が減ってはどうしようもないでしょう。

クリニックが安定経営するには、在宅に手を広げて入院需要をとってくるしかない時代なのかもしれません。「開業医は当直もオンコールもなくて楽だね」なんていわれがちですけど、在宅に手を出せば24時間対応が求められるし、自分の代わりは効かないから休めないし、と勤務医よりも大変になることも想定されます。 医者1人でやってるような零細クリニックは淘汰されてしまうことも考えられます。

 

 

高齢社会にあって医療は成長産業と言われることが多いですが、意外と頭打ちは近いようです。医療だけが右肩上がりに成長するわけはなく、やはり日本全体の縮小にあわせて医療需要も縮小していく。

こういう中で、どういう風に業界としてサービスを提供していくのか、新たな需要を掘り起こしていくのか。

保険診療だけやってればOK、という時代の終わりが近づいているのかもしれません。