日本版CCRCの諸論点(2):地域の需要の下支え効果

前回のつづきです。

 

前回は、

・今後首都圏で高齢者が急増することに加え、地方からも高齢者がわんさか上京している状況にあること

・これらの高齢者の増加により医療・介護が需要過多となり、医療・介護難民が発生する可能性があること

・高齢者の首都圏への偏在を是正する手段の1つとして、地方で継続したケアを受けられるコミュニティ(CCRC)をつくることは一定程度意義があること

 といったことを整理した。

 

前回は首都圏側の必要性の話をしたので、今回は地方側の必要性について考えたい。

 

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論点②:高齢者を受け入れには地域の需要の下支え効果がある

日本政策投資銀行が昨年6月に発表したレポート*1によれば、これからの人口減少により、日本全体の消費は2040年までに1割減、との試算*2が示されている。

 

地域ブロック別にみてみると、首都圏は2010年比98%とほぼ同等だが、北陸は15%減、四国は21%減と、人口減少に伴って地域経済がシュリンクしていく可能性が高い。

 

一方で、年齢別の消費を見てみると、高齢者だからと言って必ずしも消費が減退するわけではないようだ。

 

日本政策投資銀行の同レポートによれば、年代別の1人当たり消費額が最も多いのは25歳~29歳で、1か月の消費額は約12.5万円だが、75歳以上の後期高齢者は約11.5万円と、20代の若者と遜色ない金額を消費している*3

 

内訳を見てみると、医療費が高いのは予想通りではあるが、1か月の支出に占める割合は必ずしも多くない。むしろ、食料品費や交際費、教養娯楽費などの支出が特に高いことがわかる。食料品費に着目すると、20代の食料品費が約1.2万円であるのに対して、高齢者は2.2万円と2倍近い消費をしている。

 

高齢者の多くは仕事をしていないので、生産者にはなり得ないが、それでも"消費"という視点で見れば、地域経済の中では強力なプレイヤーとして存在感があることは否定できない。

 

こうやって見てみると、地方にCCRCをつくり、高齢者の流出に歯止めをかけるとともに首都圏からの移住の受け皿をつくるというのは、地域経済の消費者を維持し、増やすということに他ならない。消費者が増えれば、そこに需要が生まれ、それを満たすための生産者が現れる。そこには雇用が生まれるということだ。

 

介護付き老人ホームの場合、法定の人員配置は介護を受ける者3人に対して、介護・看護職員を1人以上配置することが義務付けられている。例えばだが、首都圏から30人の高齢者が移住して地方で介護を受ければ、10人以上の雇用が地方に生まれることになる。

 

もちろん必ずしも医療・介護が必要な高齢者だけがくるわけではないが、前述の消費のデータからもわかるように、食事や観光、娯楽といった面ではかなりの需要を生むはずだ。こういった需要が生まれれば雇用が生まれ、そこに住む人間が増えることになる。地域の人口が増えればそこにまた新たな需要と雇用が生まれる。

 

 

まあ、これは言ってしまえば、「土木工事をすれば地域に雇用が生まれますよ」というのと同じことでしかないわけだが、高齢者の偏在を解消する過程で、受け入れ側にも一定程度のメリットがあるということは少なくとも言えるのではないかと思う。

 

 

長くなってきたので、今日はここまで。次回以降は、

・高齢者の受け入れによって自治体の保険財政が悪化しないか?

・今でも足りてない介護人材をどうやって確保するのか?

などについて考えてみようと思います。

 

*1:人口減少問題研究会最終報告書(2014年6月日本政策投資銀行)

*2:p.43上段

*3:p.42上段