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U-Turner's Journal @Toyama

富山にUターンしてきました。

日本版CCRCの諸論点(3):受入側自治体への影響

少し時間があきましたが第3回目。

 

日本版CCRCというか、「高齢者の地方移住」という話には「高齢者ばっかり増やして、地方の財政に影響があるだろう」という反論がついてまわる。

僕自身も昔はそう思っていて、一昔前に自治体が「老後は田舎で農業をして過ごそう」キャンペーンをしていたときも、負債を抱え込むだけじゃないかと疑問を持っていた。

 

ただ、こと日本版CCRCについてだけを言えば、そういう問題はないといえる。昨年の法改正で、今年の4月から住所地特例の対象が拡大されたからだ。

 

論点③:受入側自治体への影響

住所地特例」とは、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム等に入所する場合、介護保険や医療保険(後期高齢者医療制度)の保険者を、引越前の居住地から変更しないでよい、という特例制度のことだ。

 

通常、その高齢者の住民票がある自治体が保険者になる。特別養護老人ホームなどの介護施設に隣町から高齢者が入所し、住民票を移す場合、施設が立地した自治体はより「カネのかかる」住民を抱え込むことになり、他の自治体よりも重い介護費用を負担することになる。そうなると、どの自治体も介護施設や病院の立地を拒否してしまう。

 

このように、介護施設や医療機関を「迷惑施設」化させないため、自治体をまたいで入所する場合も保険者だけは従前のままとする住所地特例という制度が設けられている。

 

この住所地特例、これまでは介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)と軽費老人ホーム、養護老人ホーム、有料老人ホームのみが対象となっていたが、昨年の法改正により、サービス付き高齢者住宅も住所地特例の対象施設となった

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これにより、例えば東京都民が富山市のサービス付き高齢者向け住宅に転居した場合、基礎的な行政サービスは当然に富山市が行うものの、介護・医療保険の保険料は従前通り東京都に納付し、保険給付についても東京都が給付することとなる。つまり、高齢者が増えても自治体の介護費用の増嵩にはつながらない。

 

政府の日本版CCRCの議論も、これを前提に進められており、CCRCに転居する際の高齢者の住まいとしては、サービス付き高齢者向け住宅が想定されている。

 

高齢者の地方移住というと、自治体の保険財政への影響が懸念されるが、住所地特例のコーディネートを適切にすることができれば、保険財政への影響はないといっていい。

 

むしろ、高齢者であっても地域に人口が増えればそれだけ市場に需要が生まれることになる。前回の繰り返しになるが、医療・介護以外でも食事や娯楽などの消費が増えれば、地域経済と雇用の下支えにもなる。

 

一方で、まったく課題がないとは言えない。例えば、限られた資源である特別養護老人ホーム入所枠の地域内での奪い合いだ。東京から金持ち高齢者がわんさかやってきて、昔から地域に住んでいた高齢者が入所できない、となると地域内でも大きな問題になるだろう。

 

「施設から在宅へ」というのは大きな政策の流れだが、要介護度が高くなってくるとどうしたって家族では対応できない段階に至る場面が避けられない。「終の住処」としての特養は、総量が自治体で規制されていることもあり、地域の希少な資源だ。これを巡って「昔からの住民」と「都会からやってきた外様住民」との間で争いが生まれないとも限らない。

 

もちろんこれはCCRCに限った話ではなく、還暦過ぎて田舎に帰ってきた都会のサラリーマンと、生まれた時から地元で育ってきたジモティーのどっちを優先するのか、という話でも同じ問題は生じうるのだが、こういう半ば感情論のようなところに、どう折り合いをつけるのか、整理が必要だろう。

 

日本版CCRCの先行事例とされている「シェア金沢」や「ゆいま~る那須」ではどうやって折り合いをつけているのか、非常に気になるところだ。

 

これまで書いたCCRC関係のエントリ

日本版CCRCはサ高住に新しい風を吹かすか?

日本版CCRCの諸論点(1):地方にCCRCをつくる人口動態的必要性

日本版CCRCの諸論点(2):地域の需要の下支え効果