都構想は地方分権の行き着く必然

5月17日に大阪都構想の是非を巡る住民投票が行われる。

 

「大阪都構想」とは、ざっくり言って、政令市である大阪市を解体・大阪府と統合させるというもの。

大阪都構想 - Wikipedia

 

ここ10年の地方分権の流れをみると、ついに行き着くところについたな、という感じがする。

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地方分権というと、国から都道府県へ、都道府県から市町村へ、という風に、権限を上から下へ移していくのが基本的な流れだ。その流れからすると、大阪市が持っていた権限を大阪府が吸収するという大阪都構想は、一見すると地方分権に逆行するように見えるかもしれない。しかし、この大阪都構想は、そういう上から下への重力に対する、大きな揺り戻しの動きではないかと思う。

 

地方分権で空洞化する府県

政令市というのは、実質的に都道府県とほぼ同等の権限を持っており、1つの都道府県の中に2つの県庁が存在しているのに近い。例えば都市計画に限ってみても、政令市の都市行政については都道府県にできる関与は極めて限定的だ。

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大阪府の場合、府内に大阪市と堺市という2つの政令市を抱えており、その行政区域内の面積の2割、人口ベースなら4割を占めている。この大阪府の中心となるエリアは府にとってみれば"治外法権"に近い状態になっている。*1

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「都構想」は地方分権に対する揺り戻し

地方分権の名の下、権限を下に下に落としていった結果、県庁のお膝元ですら「都道府県は何もする権限がない」という状態が全国で発生している。政令市のほかにも、中核市や特例市という制度もあり、県に残された事務は都市郊外の中小市町村のフォローと「広域調整」という名のもとに残った端パイ業務しかない。このまま分権が進みに進めば、最終的には府県の存在意義は、町村を束ねる「郡」程度の役割しか残らない。

 

今、大阪都構想に触発されて「中京都」や「新潟州」などの政令市と都道府県の合併構想がいくつか発生しているが、いずれも政令市に"おいしいところ"を奪われている県であり、地方分権の中で今まさにレゾンテートルが問われているところだ。

 

つまるところ、「都構想」とは、地方分権が進んだ結果として権限の中身の大部分がなくなってしまった府県をどう再構築するかという問題の発露だろう。

 

交通の進歩に対抗するには広域行政が必要

さらに言えば、高速交通網が整備された今、一つの市の行政範囲内で完結できる都市政策は極めて限定的になってきている。

 

これまで「身近なことは住民が決める」という発想で権限を基礎自治体に下ろそうとしてきたが、徒歩か自転車ぐらいしか交通手段がない小学生や中学生ならいざ知らず、みんな車を持ってるし、電車ですぐ隣の市町村に行ける時代、夜間人口を前提にした「基礎自治体の地方自治」の仕組みがどれだけ効果を発揮できるだろうか。

 

これは富山県の話だが、富山市がコンパクトシティを標榜する一方で、その外縁の市町村はバンバン大規模開発を進めている。富山市のど真ん中からでも射水のコストコは30分もかからないし、小矢部のアウトレットも1時間あれば着いてしまう。このように、既に1つの市だけでは政策が完結しない時代になってきている

こういう意味でも、都道府県で中核となる都市と広域行政の合併というのは避けられないのではないかと思う。

 

大阪都構想は地方自治の試金石

大阪都構想、いよいよ決戦が間近になり、「大阪市の権限が縮小される」「市民へのサービスが悪化する」など、さまざまな反対論を目にするようになってきた。確かに、大阪市単独で見れば今の市の枠組みを墨守する方が権限が大きいのは確かだろう。

 

一方で、先に述べたように、地方分権のなかで権限が分散した結果、道府県も市町村も単独でできることに限界が近づいているようにも思える。

 

今回の住民投票は、「時代に合わせた地方自治の形を作り出せるか」の試金石になっているのではないだろうか。

*1:もちろん、広域調整が必要な事務(病院の開設許可など)は政令市に移管されていないので、全くすべての面で関与できなくなったわけではないが、実態として関与は極めて弱いと言わざるを得ない。