意思決定「させる」技術

上司に意思決定「させる」技術というのがあるのだが、それが意外と世の中に認知されていない気がする。

 

例えばだが、以下のようなシチュエーションを想像してほしい。

・あなたはあるプロジェクトの工程管理をしているが、ある部品について、どの製品を選ぶかまだ決まっていない。

・その候補は、「コストは安いが、品質が低いA案」と「コストがかかるが、品質も高いB案」の2つ。

・プロジェクトの進捗上、そろそろA案にするかB案にするか、決めて発注をしないといけない。

・しかし、どっちにするかを最終的に決める権限は、上司であるX部長にある。

 

こういうとき、ままあるのは、「A案とB案のどっちがいいと思いますか」と、フリーハンドの質問をして"決めてもらおう"とする、裸単騎・ノーガード戦法。

 

しかし、こんな相談の仕方は愚の骨頂だ。

「そんなこともわからんのか」

「そんなことわざわざ俺に判断させるのか」

「お前は今までなにをやってきたんだ」

と言われるのは目に見えている。そうでないなら、神のようにやさしい上司か、さもなくば、あなたに何一つ期待をしていない冷めきった上司のどちらかだろう。

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自分よりも上司が詳しいわけはない、と思え

僕は数年前まで霞が関で仕事をしていたのだが、役所で仕事できてよかったなと思うのは、あそこは徹底的にボトムアップの文化だったことだ。

「その政策の担当官は、課長よりも局長よりもその政策に一番詳しい」という前提で物事が動いていた。キチっと理屈がそろってれば、役職の重軽よりも担当官の判断が優先された。*1

ある案件で、あることを局次長から「何が何でもやれ」と言われ、当時入省3,4年目だった私が激しく反対したことがあったが、最終的には局長が「担当官の判断優先」としてうまくとりなしてくれた。*2

 

あることを決めるとき、最終責任は上長にあるが、その問題に一番詳しいは日々その業務をまさに取り仕切っている担当者であるはずだ。であるならば、その問題で"正しい意思決定"に一番近いのも当然、担当者でなければおかしい。

 

それなのに、自分より詳しくないはずの上司に対して「どっちがいいですか?」=「自分に判断できないので代わりに決めてください」と聞いたところで、自分よりも正しい意思決定ができるはずがない。

 

上司に決めさせれば、自分の責任を問われることはないかもしれないが、それは「自分は担当業務のことをわかっていません」と言っているに等しく、「担当業務のフロントランナー」としての自分の価値を大きく毀損している。

 

自信がなくても仮説をぶつけろ

とはいえ、いくらその業務を担当していたとしても、「どっちがいいか自分でも本当に判断できない」という場面はあるだろう。

 

これはテクニックでしかないが、そういう場合は、カンでもなんでもいいから、A案かB案のどちらかを選び、なんらか理屈をつけて「これでいいか?」とハッタリかまして上司に聞くのがいい。

 

さっきの例なら、たとえばだが「今回のプロジェクト、他の箇所でコスト増が予想されているので、安価なAがいいと思いますがいいでしょうか」と聞けばよい。あるいは「この製品は顧客の目につきやすいところなんで、品質がいいBを採用したほうがいいと思いますが、どうでしょうか」というのでもいい。

とにかく、"なんとなくそれらしい理屈"がついていればいい。

 

前者の場合なら、それで「Aでいいよ」といわれれば「無事に決まってヨカッタネ」となるし、ダメと言われればBにすればいい。

 

上司がどうジャッジするかなんてのは、実験と同じで、仮説をぶつけて応答を検証するしかない。まず仮説をつくることが大事だ。

精度はさておいても、自分の仮説をぶつけられれば、それを上司に検証してもらえる。それが次回の判断の参考になる。そういうことを繰り返していけば、いずれ上司の思考パターンがわかり、自分一人でも意思決定ができるようになる。

 

こういう仮説・検証プロセスなく「AかBか」だけを問うて仮に「A」と答えが得られたとしても、上司が何をもとに判断したか自分にはわからない。

ブラックボックスの意思決定だけが帰ってきたところで、自分には何のナレッジも残らない。このままでは部下は自分で判断する力がつかないし、上司はいつまでたっても手が離れない。まさしくお互いの不幸だ。

 

意思決定は「してもらう」ものではなく「させる」もの

意思決定というと「上司に"してもらう"もの」というイメージがあるが、むしろ逆ではないかと思う。

意思決定は部下が上司に"させる”もの」だという考え方でないと、部下はいつまでも部下のままだし、上司はいつまでも部下をガミガミしかることになる。

 

上司の扱いの悩む若者のみなさん、上司に判断させる環境をどうやってつくるか、というのを考えてみてはどうだろうか。僕も日々悩んでいます。

*1:逆に言えば、理屈を詰められないやつはゴミクズのように扱いわれる。「担当者が一番詳しい」というのは「担当者が一番勉強している」というのが大前提である。

*2:話はまとまったものの、ちょっとバツが悪いなと思い、後日次長のところに謝りにいったが、次長も「若い奴はそれぐらいのほうがいいんだ」と気にもしていなかった。