「なんちゃって高度急性期病院」の終わりの日は近い?

来年は2年に1度の診療報酬の改定の年。診療報酬は中央社会保障医療協議会という厚労省の審議会で決まることになっている。

 

実際の答申が出るのは来年2月ごろだが、例年、今ぐらいの時期から少しずつ改定の方針がにじみ出されてくる。今日の中医協総会でもにじみ出しがあった。

 

今日の話題は入院医療だったが、中でも気になったのは、前回改定から引き続き議論になっている7対1入院基本料のところ。

 

7対1一般病棟入院基本料とは、看護職員が患者7人に対して1人配置されている病棟の入院料のことで、入院基本料の中では最も看護配置が手厚く、"グレードが高い"とされている。

 

そもそもこの7対1入院料は「医療崩壊」「救急崩壊」に注目が集まっていた平成18年度の改定で新設されたもので、手厚い看護配置が必要な高度急性期医療を担う病棟にしかるべき報酬を与える、という目的でつくられた。*1

 

ところが、本来は高度急性期を念頭につくられたはずが、看護師の頭数さえ揃えれば高い報酬が得られるという妙なインセンティブをつけた結果、患者象が高度急性期といえない病院まで7対1を目指すようになり、今やすべての入院基本料の中で7対1の割合が最も多いという倒錯した事態になっている。

 

7対1を届出てはいるが、救急は受け入れないとか、軽度の患者ばっかり、という病院は業界では「なんちゃって高度急性期」と揶揄されているが、制度上認められているため、そういうところも少なからず存在する。

 

これが近年問題視され、7対1入院料の36万床を高度急性期18万床まで絞り込もうという流れになっている。(いわゆる「ワイングラスからヤクルトへ」)

 

もちろん患者からすれば看護師は多いに越したことはないし、看護師側からしても1人当たりの負担が減るのでありがたいのは間違いない。問題なのは、(手厚い看護配置には高い診療報酬が割り当てられるため)医療保険財政の観点から野放図に高い看護配置を認めることができない、ということだ。

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前回・平成26年度改定でも7対1入院料を絞り込もうと要件の厳格化が図られたが、今日の中医協の資料を見る限り、今回の改定はさらに7対1入院料を絞り込むための改定になりそうな雰囲気がヒシヒシと感じられる。

 

特に注目したいのは、7対1の話題に突然出てきた「特定集中治療室管理料」と「総合入院体制加算」の届け出状況。資料を頭から見ていけばわかるが、それまでずっと7対1入院料の現状の資料が続く中、明らかに異質な話題が飛び込んできた恰好だ。

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当然ながら、厚労省の資料に無意味なものはないので、ここで降って湧いたこの2つが次回改訂で7対1入院料の要件にかかわってくるのは間違いない。

 

要は、厚労省としては、24時間救急やってる総合病院か、ICUで超高密度の医療を提供してる病院でなけれは「高度急性期に値せず」として7対1入院料を算定できなくさせる、ということだろう。

 

前回改定でも7対1の要件は厳格化されたが、それでも在宅復帰率や重症度など、患者の流れをコントロールすることでなんとかクリアできる、比較的"およぎしろ"のある厳格化だった。ところが、もし「特定集中治療室管理料」「総合入院体制加算」の届出が施設基準に課せられるとなれば、そのような"およぎしろ"はまずないだろう

 

「なんちゃって高度急性期」は次期改定で今度こそバッサリ切られる可能性が高い。

*1:それまで一番看護配置が手厚かったのは入院基本料は10対1だった。現在、入院基本料は看護配置が手厚い順に7対1、10対1、13対1、15対1、20対1、25対1の6種類がある。