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U-Turner's Journal @Toyama

富山にUターンしてきました。

岩手の中学生自殺事件から顧客管理について考える

先日、岩手県で中学生が電車に飛び込んで自殺するという事件があった。

生徒と教師は毎日ノートを交換して日々の報告をしていて、その中に「いじめ」や「自殺」を仄めかす内容があったらしい。

男子生徒は担任の教師とやりとりしていたノートでいじめ被害を訴え、死の直前には「もう死ぬ場所は決まっている」などと自殺を示唆していたが、担任からのコメントは「明日からの研修、楽しみましょうね」といったものだった。

尾木ママ、岩手中学生いじめ自殺の学校に激怒 「これじゃ生徒殺人学校!」(RBB TODAY)

 

確かにSOSを送るためのコミュニケーションのチャネルはあった。ただ、それが活用されてなかった。この事実に対して、担任に対する非難の声が上がっている。

尾木氏は、今回の事件について、担任の対応を「子供の声をまともに受けとめられない。生徒に上から目線で接している」と批判。さらに学校についても、生徒の安全配慮義務を怠ったとして、「完全に法律違反です、この学校は。学校の体を成していないですよ」と厳しく批判した。

尾木ママ、岩手中学生いじめ自殺の学校に激怒 「これじゃ生徒殺人学校!」(RBB TODAY)

 

担任がきめ細かくフォローできてればもっとなんとかできたんじゃないか?というのは確かにそうなのかもしれない。

 

ただ、それってこの担任の先生がタマタマ他の教師と比べて、著しく共感力が低くて、やる気ゼロで、まるで教師失格だったから、ということなのだろうか?

 

そうじゃねーんじゃねーの、という気がする。

これを「担任がなってない!学校がなってない!」といって終わらせては、根本的な解決にならないと感じる。

 

「教師と生徒が毎日ノートでやり取りする」というのは、完全にバイのコミュニケーションチャネルなので、これはすごくいいシステムだと思う。

今回の問題は、そこから教師は何をくみ取って、どう対応するのか、というユーザー側の運用ができてなかったということ。

 

外形的には、毎日ノートに文章が書いてあればシステムは動いているように見える。けど、それだけではその背景・目的は達成されてない。それだけではダメで、そこから「生徒が何を考えているのか」「何を求めているのか」という"ニーズ"をくみ取ろう、という教員側の能動的姿勢が不可欠。

果たしてそういう能動的姿勢を持つように担任教師は動機づけされていたのか?というのがこの件のポイントではないか。

 

これは教育に限らないと思いますが、成果主義・PDCA・マネジメントだなんだといって、どの業界でもいろんな制度を入れて、業績を目で評価できるような仕組みをつくってきた。

世の中にはいわゆる"ベストプラクティス"が溢れているので、ヨソでうまくいった好事例をまねることが簡単にできる。お金を払えば自社への制度導入を手伝ってくれるコンサルタントもたくさんいる。その結果、あれもこれもとやることが増え、スタッフのモチベーションは、逆に、下がりに下がっているのではないか

 

件のノートのやりとりは、民間企業で言えばまさしく「顧客管理」にあたる。この例えには反発もあるかもしれないが、「生徒」を「顧客」に、「営業担当」を「教師」に置き換えると、まさに顧客管理だ。「顧客」の声を聴き、きめ細かい対応に反映させるというものであったはずだ。

ただ、顧客管理の成否が最終的に帰着するのは、顧客の声を聴く一人一人のスタッフをどう動機づけるかということ。

 

今回のノートのように、制度としてのCRMシステム導入はお金さえかければできる。

経営者(学校の場合は文科省とか教育委員会だろうか)からすれば、便利な制度やITシステム入れればうまくいくだろ、と思いがちだけど、スタッフが「大事だ」「必要だ」と認識してくれないと、「単に業務増えただけだよね」という残念な話になってしまう。

実際に制度を動かして顧客の声を聴くのは一人一人の血の通ったスタッフで、彼らに「顧客の声を聴こう。それを業務に反映させよう」というモチベーションがわかなければ顧客管理は成功しない。

 

今回の事件、単にいち教師の資質の問題に矮小化されかねないが、本質はそこではないのではないか。生徒の声を真摯に聴く「組織文化」が醸成されていなかったというのが根本の問題ではないかと思う。

 

制度導入、システム導入というと何か先進的な感じがするし、確かにスタッフ一人一人の意識を変えるのは大変で、お金を払えばなんとかなる"仕組み"の方に流れがち。外形的にも何かが変われば、それだけで成果が出たような気分にもなれる。

今回の件は、そういう易きに流れる考え方が実はまったく役に立たないことを証明したように感じられる。

 

顧客管理とは組織文化づくり。