僕らは働けなくなるまで働きましょう(NHKスペシャル「老人漂流社会」)

NHKスペシャルの「老人漂流社会」シリーズの放送が昨日あった。

 

終身雇用制度のもと、経済的には比較的余裕があると思われてきた団塊世代だが、年金収入だけでは生活ができず、また、「親の介護の問題」と「就職氷河期で安定した職に就けなかった子供の問題」の板挟み合っており、“老後破産”が忍び寄っている・・・というのが今回の特集の趣旨だった。

 

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www6.nhk.or.jp

 

私の率直な感想は「老後は年金だけで生活できる」という前提が長寿と低成長で破たんしてしまったわけで、年金で生活できないことを以って云々と議論するのはそもそも意味がないのでは、というところ。

 

団塊の世代が「介護が必要な親の世話」と「自立できない子供の面倒」の板挟みにあっている、というのは自分の周りでもよく聞く話で、就労能力のある特定の人間に何人もの家族・親族が”ぶら下がる”という現象は確かに起きていることだと感じる。

 

ただ、これも団塊世代に限った話ではなく、親がリストラされて子供が稼がなきゃ、という話だってあれば、子の収入が少なすぎて財政的に親離れできない、ということもある。いずれにせよ、若者の非正規雇用問題も団塊世代のリストラも構造的には同じ話で、レールに乗れなかったり脱線してしまった人が資産を蓄積できなくて困窮しているということだと思う。

 

これに対して「レールから落ちない社会を作ろう」「正社員を増やして非正規雇用を減らそう」というのが厚労省のドグマなわけですが、死ぬまで安定したレールなんてものはもう日本にも世界にも消えてしまったので、もはやそんなことは実現できなくなっている。

 

結局のところ、年金の問題も、家族の扶養問題も基本的な対策は同じで、「どういう状態になってもカネを稼いでいく能力と覚悟を養う」ということでしかないのではないかと思う。

 

「65過ぎたらあとは悠々自適に趣味の生活を」なんていうことはもはや非現実的で、やっぱり歳取ってもなんとか働き続けないといけない時代なんだろうと思う。幸い、人口減少で働き手は引く手数多なわけで、以前よりずっと働き口は見つけやすくなっている。例えば時給900円のバイトを月150時間ぐらいすれば13万ほどの収入になる。年金と合わせれば、それなりに安定した生活ができる額になるはず。*1

 

そうはいっても、歳を取れば体にガタが来て今まで通り稼げなくなることもあるでしょう。もし病気になったりして働けなくなったら、そのときはしょうがないんだから、堂々と生活保護を受ければいい。自活できるところは自活し、無理なら社会に頼るのはおかしいことではない。セーフティネットを前提におきながら、なるべく自立できるように頑張るというのが、超高齢社会の生き方ではないかと思う。

 

それは決して今の高齢者だけの問題ではなく、将来高齢者になる私たちの世代の処世術でもあると思う。

 

 

あと、ツイッターの実況を見ていたら、若い世代の怨嗟の声が渦巻いててなかなか興味深かった。

 

 

老後破産は確かに起きている問題で、確かに解決が必要なのかもしれないけど、日本社会全体の中では"本丸"ではないんだろうなと思う。この番組が問題としている「老後破産」はそれ1つが社会問題というわけではなく、「老々介護」「ワーキングプア」「年金問題」などなどが重なり合った結果、団塊世代の破産が表出してきたわけで、あくまでそういう諸課題の負の波及効果の一つでしかないことに注意が必要。

 

そう考えないと「団塊世代の年金を増やしましょう」以上の解決策が無くなってしまうわけで、今でも世代間格差で怨嗟渦巻く21世紀にそんな解決策は現実的ではないし、深刻な世代間対立を生んでしまう。この番組の不可解なことは、今、そういう世代間格差が社会問題として火の手を挙げようとしている中で、NHKはなぜあえてそれを煽るようなフレーミングをしてしまったのか、ということ。

 

まあ、NHK的にはメインの視聴者層の団塊世代をワッショイして共感と数字得られればビジネスとしては御の字なのかもしれないが、その対価としてこの番組は若い層の多くを敵に回してる気がする。そういうネガティブな感情からでも番組見てくれるなら炎上マーケティングとしても成功なのかもしれないけど。

*1:逆にいうと、年金がもらえる高齢者はそれなりの収入があれば生活できるけど、若者は年金貰えないからそうはいかないので、若者の貧困問題はより深刻。