富山の土地開発の変遷と今後のあり方について

国交省が昔からコツコツデータをつくって公表してきた「国土数値情報」というものがある。標高や河川、海岸線などの地形情報の他、道路、鉄道などの交通網、全国の学校やニュータウンの位置など、だれが使うともわからないようなマニアックなデータが様々に取り揃えられている。

 

7月くらいから富山の都市構造について、主に人口構成や属性に注目していろいろ調べてきたが、今回は視点を変え、国土数値情報の土地利用状況データに着目し、経年変化を追ってみた。*1

 

元となった「土地利用細分メッシュデータ」は、地図を100メッシュの区画に切り、その土地利用状況を田、森林、建物用地、河川、湖沼・・・などの用途にそれぞれ分類したもので、土地の開発状況の展開が記号でわかるスグレモノだ。

 

 1987年⇒1997年

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1987年と1997年で「建物用地」だったエリアを色わけした。

青が1987年時点の「建物用地」、赤が10年後の1997年での建物用地になる。ざっぱくに言えば、赤いところがこの10年間で新たに都市開発が進み、住宅地や商業地、工業用地になったところと言うことになる。

 

こうしてみると、小規模な郊外の開発はポツポツとあるものの、大きく見ると大規模な開発は大広田、山室、月岡、大沢野、速星~婦中熊野など、局地的なものに留まっている。80年代後半~90年代と言えばまだまだ人口も増えていた時期で、開発圧力も強そうな気もするが、実際にはそこまで開発は進んでいなかったようだ。

 

1997年⇒2006年

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次に、1997年から2006年にかけての開発状況を見てみる。*2

この期間は、特定の地区で大規模な開発が起きているというよりは、既存の都市化したエリアの周辺がじわじわと開発されてきている、という印象が強い。

旧富山市の市街地のなかでも穴あき的に都市化されていなかったエリアが開発され、面的に広がる市街地が構成されてきている。

 

2006年⇒2014年

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最後に、最新のデータである2014年から2006年にかけての開発状況を見る。過去の2つの機関と顕著に違うのは、郊外の開発が爆発的に増えているということ。

藤ノ木、山室、山室中部、蜷川、新保、速星、鵜坂など、都市部近郊の開発が一気に加速しているのと同時に、それまでは開発圧力が強くなかった郊外の田園エリア(新保、杉原、保内など)でも虫食い的な開発が多数発生しており、スプロールが起きている。

 

防衛線を引き直し、住宅地のスクラップ&ビルドを

事ここに至ってしまうと、今更従来の「都心区域」にアメで人を引っ張ってきてコンパクトな都市構造を目指しましょう、という今のアプローチの延長線上に「コンパクトな都市構造」はないと言わざるを得ない。変に都心区域や現在の市街化区域にこだわると、風車に立ち向かうドン・キホーテのように勝てない勝負を続ける羽目になる。

 

今回のデータ、近郊・郊外のスプロールが進んだのが、もともとの市街地の開発が飽和した後だという点はなかなか面白い発見だった。これはつまり、郊外に安い土地があっても、手近にある未開発の土地の方が選好されやすい傾向があったということだ。

 

このことを考えると、まずは、現実的なところで防衛線を引き直すことが必要だ。

速星・鵜坂・光陽・蜷川・堀川南・山室中部あたりまでを現実的な都市化の南限とし、まずは開発をそのエリアまでにとどめ、優先的に開発することで、郊外への虫食い的なスプロールをまずは抑えていく。

その上で、今後人口が減って空き家が増えてくるエリアを再開発し、住宅地のスクラップ&ビルドを行うことで人口集積を進める。民間だけでは大規模な開発はできないため、土地区画整理も活用していきながら、行政権力も活用して新陳代謝を高めていく・・・というのが現実的な方策ではないかと思う。

 

”コンパクトシティ”の行く先は

2006年というと、旧富山港線が富山ライトレールと名を変え、富山市がコンパクトシティ政策で大きな旗をあげた年だ。

 

あれから8年が経過し、新たに環状線が整備され、再開発ビルが林立するなど「中心市街地」の見てくれは改善し、昔よりも人が集まるようにはなってきたたが、実際のところ、郊外開発はむしろ加速し、CompactどころかOutspreadingな都市になってきていることが明らかになった。

 

コンパクトシティ政策は、確かに人の流動を中心市街地に向けつつあり、それは確かな成果であることは間違いない。ところが夜間人口はむしろ逆で、郊外開発はむしろ進展している。

この流れをどうやってせき止めるのか。少なくとも、今行われているような「中心市街地で再開発ビルぶち建てる」というだけでは流れを変えることはできないのは間違いない。

 

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*1:ちなみに、このデータ自体は以前から公表している人口のメッシュ図作成時にもデータを変形させるための係数として使用している。

*2:1987年と1997年は国土地理院地図からデータがつくられているが、これ以降は衛星写真から土地利用状況を判別している。元のデータが違うため、データの連続性に若干の疑義がある。さらに、そもそものデータの作り方が異なるため、そのまま重ねるとズレが生じてしまったため、今回の比較では1997年のデータをオフセットして無理やり重ね合わせている。