薬局の競争力は「懇切丁寧な指導」だけなのか

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先日、厚生労働省から、薬局でのポイント付与について以下のような通知が発出されていました。

保険調剤等に係る一部負担金の支払いにおけるポイント付与を原則禁止している趣旨は、以下の考え方によるものであることから、保険調剤等に係る一部負担金の支払いにおけるポイント付与を行っている保険薬局には、この考え方を伝え、制度に対する理解が深まるよう努めてください。

・ 保険調剤等においては、調剤料や薬価が中央社会保険医療協議会における議論を経て公定されており、これについて、ポイントのような付加価値を付与することは、医療保険制度上、ふさわしくないこと

患者が保険薬局等を選択するに当たっては、保険薬局が懇切丁寧に保険調剤等を担当し、保険薬剤師が調剤、薬学的管理及び服薬指導の質を高めることが本旨であり、適切な健康保険事業の運営の観点から、ポイントの提供等によるべきではないこと

 

その上で、当面は、以下の①から③までのいずれかに該当する保険薬局に対し、口頭により指導を行い、その上で改善が認められない事例については、必要に応じ個別指導を行っていただくようお願いいたします。

① ポイントを用いて調剤一部負担金を減額することを可能としているもの
② 調剤一部負担金の1%を超えてポイントを付与しているもの
③ 調剤一部負担金に対するポイントの付与について大々的に宣伝、広告を行っているもの(具体的には、当該保険薬局の建物外に設置した看板、テレビコマーシャル等)

保険調剤等に係る一部負担金の支払いにおけるポイント付与に係る指導について(平成29年1月25日厚生労働省保険局医療課事務連絡) 

ポイントカードはNGでもクレジットカードはOK

日本の保険診療はすべて公定価格で統制されており、値引き等の経済上の利益で以て患者誘導することが禁じられています。しかし、一部ドラッグストアでは通常の買い物と同様に、保険調剤の自己負担分についてもポイント付与が行われているという実態がある。

 

この文書は厚生労働省本省が、保険薬局に対する指導の実務を行っている地方厚生局に対して通知したもので、地方厚生局はこの指示に基づき、個別の保険薬局に指導を行うことになります。保険調剤に対するポイントの付与は実態上、値引きと同等の効果があるということで、それに対して「医療保険制度上、ふさわしくない」とする見解は数年前からアナウンスされていましたが、今回は具体的な指導対象を明確化したものです。


ポイント付与が実質的な値引きになるからダメよ、というのはまあ制度の趣旨からしてやむを得ないのかなと思います。ただ、ポイントカードはダメでもクレジットカードはOKだったりするので、カード払いできる薬局は実質的には経済的利益を供与しているわけで、線引きはかなりファジーなのが現実です。*1

薬局の競争力は「懇切丁寧な指導」だけ?

また、厚労省の通知では

患者が保険薬局等を選択するに当たっては、保険薬局が懇切丁寧に保険調剤等を担当し、保険薬剤師が調剤、薬学的管理及び服薬指導の質を高めることが本旨

とされており、これまた正論というしかないのですが、ただ、「調剤、薬学的管理及び服薬指導の質を高める」ことで競争優位を構築できている保険薬局は現実にはあまり多くないのではないかという気がします。

 

先日、近所のドラッグストアに行ったら、生鮮食品もあれば冷凍食品もあるし、酒も売っていて、スーパーと遜色ないラインナップで度肝を抜かれました。おまけに医薬品も売ってて、処方薬も受け取れる(もはや主従逆転)。

 

確かにここまでなんでも揃ってたら処方薬の受け取りはここにするかもしれないな、と感じる一方、医療の質を高めることで患者を集めましょう、という厚生労働省の「正論」はこういう圧倒的なマーケティング施策の前では蹴散らされてしまっている。

 

薬局も顧客ニーズは多様化している

ここ数年の動きを見ても、地域包括診療料の新設などによる院内調剤への揺り戻しや、病院敷地内薬局開設の容認など、今までの医薬分業のあり方が変わりつつある。

 

こういう変化の根底にあるのは、患者のニーズが多様化しているということではないかと思う。まあ患者のニーズ自体はもともと多様で、医薬分業が一周まわって飽和してきた結果、供給側に多様性が生まれてきたということかもしれません。

 

例えば厚労省が最近旗を振ってる「かかりつけ薬剤師」や「健康サポート薬局」などなどは、多疾患を抱えていたり、療養上の悩みの多い人にとってはありがたいものであるかもしれないし、寝たきりの人には訪問薬剤指導してくれる薬局がいいのだろうと思います。でも、「基本的には元気で、生活習慣病の定期処方の薬を飲み続けているだけ」という人なら、懇切丁寧な指導よりも日用品がなんでも揃う利便性の方が重要だし、「超高齢でクリニックから外にでて道路向かいの調剤薬局まで歩くのもつらい」という人にとってみれば、いくら付加価値があったとしても外の調剤薬局に行くよりも病院内で調剤してほしいだろう。

 

冒頭の厚労省の通知、公的保険制度のタテマエからするとまったく正論で、立場上もそう言う外ないんだろうけど、なんとなく上滑りしているような印象はぬぐえない。

 

世の中の商売はポイント付与してるところとそうじゃないところもあるわけで、調剤薬局もサービスラインナップやプロダクトミックスと同列にポイント付与を考えてやってもいいのではないかと思う。厚生労働省も「看板にポイント云々と書いてる!」等々の指摘に貴重な行政リソースを消費するのはお互いの不幸ではないだろうか(もちろん、これが自己負担分全額ポイント還元とかになってくると流石にやりすぎなので、一定の歯止めは必要とは思いますが)。

*1:汎用的なクレジットカードのポイントは「利便性向上のためにはやむを得ないもの」として認められている