カヌー・スプリントの薬物混入問題に関して

今朝のニュースがあまりに衝撃的だった。

昨年9月のカヌー・スプリントの日本選手権(石川県小松市)に出場した男子選手(32)が、別の男子選手(25)の飲み物に禁止薬物である筋肉増強剤を混入し、入れられた選手がドーピング検査で陽性となっていたことが9日、関係者の話で分かった。ともに昨夏の世界選手権代表で2020年東京五輪を目指すトップ選手で、異例の事態。
加害選手は日本カヌー連盟などの調べに対し、東京五輪を目指すライバルを陥れようとしたと説明しているという。被害選手が検査で陽性反応を示した後、同連盟による調査の中で加害選手が禁止物質の混入を認めた。

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カヌー・スプリントとは、いわゆる「激流下り」のカヌー(スラローム)とは別物で、流れのない水面(湖や池などが会場となることが多い)で如何に速くゴールするかを競うというもの。

 

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※写真は日本カヌー連盟ウェブサイトより

 

実は私も中学生のときにカヌー・スプリントの選手(当時は「フラットウォーター・レーシング」という名前だった)で、この事件の加害選手(以下、A選手という)とは1985年生まれで同学年だった。同じ大会に出たこともあった。

 

A選手は中学生時代から同世代でも抜きんでて強い選手たった。中2で全中優勝、中3で2連覇、同世代では敵うものなし、という印象が強く残っている。こういう若くして頭角を現す選手が世界大会やオリンピックに出るんだろうなと思っていた。

 

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私自身は高校1年生の時に学校とカヌー場の往復が難しくなってカヌー・スプリントをやめてしまったが、その後も何となくA選手のことは気になっていた。既に削除されてしまったが、彼のブログもたまに読んでおり、近況を定期的にチェックしていた。

 

A選手が大学卒業後、北京五輪出場を逃した後も就職引退せずにロンドン五輪を目指して選手を続ける決断をしたときは、芽が出ないのでとっとと競技から逃げてしまった自分と比べてなんと男らしいかのと感動した記憶がある。

 

その後、それでもオリンピックのアジア予選を突破できなかったことを知ったときは、他人事ながら大きなショックを受けた。

 

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続報によれば、A選手が被害選手に薬物を混入した動機は以下のようだ。

 

・A選手を含め、4人乗りカヤック(K-4)の東京五輪日本代表の候補が複数いる

・A選手は当落線上にあり、若手で台頭してきている被害選手が脅威だった 

・A選手を追い落とせば東京オリンピックに出場できるのではないか

 

当然ながら、やったことはあんまりにも姑息なことなので、A選手を擁護することは到底できない。

 

ただ、オリンピック出場を夢見続けた10年間の道程や、アスリートとしては体力的にもピークを越えている35歳で迎える最後のオリンピックが自国開催であること、もうあと一歩で出場できるかもしれない状況だったことを考えると、A選手が他の選手を蹴落としてしまいたい、と思ってしまった気持ちが、ひどく理解できてしまうのである。

 

 

 この事件のためにA選手は8年間の資格停止となり、目指し続けてきたオリンピックの可能性を自分で摘んでしまった。A選手の本名でググるとありとあらゆる人からボロクソな言われようをしている。

 

まあ、それは自業自得といえばそれまでなのだが、20年にも及ぶ彼のカヌーイストのキャリアの結末に、同世代のエースの予期せぬ最後に、私はただただ悲しい思いをしているのである。