コンパクトシティがらみで日経新聞からディスられた件について

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日経新聞「コンパクトシティー『優等生』富山市の苦悩 」という記事で、ほぼ名指しに近い感じで弊社の病院事業が無秩序な開発とディスられていて「いや~、我々も社会に認知されるようになったもんだな~」と一人感心していた。


内容はというと、まあなんというか、サーセン、、、って感じでしかない。


多くの自治体で人口が減っているのに街の拡散が止まらない。このままでは財政負担が増し都市は衰退しかねない。地方都市の街づくりはどんな課題を抱えているのか。現場を歩き、コンパクトシティーの虚実に迫った。

JR富山駅から車で20分走った富山市郊外の婦中町。2000年開業の大型商業施設を核とするが、周辺の多くは本来開発を厳しく制限すべき「市街化調整区域」だ。それでも宅地開発が進み、婦中地域の人口は過去10年間で8%増えた。2月には新たに病院も開業した

街の集約に本気で取り組む自治体があっても、同じ都市圏で無秩序な開発が進めばコンパクト化は画餅に終わる

www.nikkei.com

 

古巣の人に刺されそうな内容、、、

 

郊外開発=街の拡散?

富山西総合病院・富山西リハビリテーション病院は市街化調整区域に立地しており、富山市開発審査会の議を経て開発許可を得て特別に開設したものなのは間違いない。

 

ただ、「新たに病院も開業」とはいうものの、既存の八尾総合病院・山田温泉病院の老朽化に対応するために移転開設したもので、医療計画で総量が規制されているため、診療圏内での総病床数は変わっていない。富山市の都心地区から病院が郊外に移転してきたならまだしも、自院の診療圏内で中山間地域の病院を郊外に建替えるのは「街の拡散」なのか。むしろ地理的には都心に近づいてきている。

 

また、富山市だって合併前の旧富山市以外の地域には約10万人(総人口の25%に該当)が住んでいるわけで、今現に生きてる「郊外」「中山間地域」の人の、医療や福祉、日用必需品等のいろいろな生活ニーズを切り捨てていいわけはない。

 

手段は開発規制だけか

調整区域を開発するのは制度の趣旨からしたら確かにけしからんのだろうが、富山市の市街化区域に300床の病院建てられる一団の土地なんかないわけで、「事業者の都合なんて知らないよ、市街化区域内に建てられないならもうダメだよ」と言われたら事業者はもう富山市から出ていくしかない。杓子定規に切っていったら事業者も住民も行政もみんな困ってしまう。

 

開発許可制度はそういう諸々の事情を制度に取り込むためのもので、「郊外開発規制を緩めたまま」というのはあまりに一面的と言わざるを得ない。むしろ、富山市はこれまでもコストコ等の大規模な小売店舗の開発を都市政策を理由にリジェクトしてきており、その結果が近年の近隣都市の郊外開発につながっていることにも注意が必要だ。

 

記事では「広域調整できず」と批判的だが、富山県が広域調整して一致団結して規制強化したところで石川県や新潟県に計画がスライドするだけだろう。富山県を端から端まで移動するのに、自動車でも1時間しかかからないわけで、本当に広域調整するならもう国家による開発統制を行わないと話が成立しない。

 

開発は「規制」ではなく「受容」で対応すべき

私自身はコンパクトシティ政策はもはや是非を論ずるステージにないとは思っており、政策としては大いに推進すべきだと考えているが、「とにかく郊外開発抑制すればよい」みたいな単純な議論に持ち込むのは現実の問題の解決にならないので無益と言わざるをえない。

 

郊外の開発圧力が高いのは単に「土地が安い」というだけの話ではない。高速交通網の整備や情報通信技術の発達、都心地区の開発の困難さ、家族のあり方の変容、購買行動の変化等々、いろいろな社会の変化が背景にある。郊外の穴をふさいだら自然と都心に回帰していくというものではない。コンパクトシティ政策は、そこにしっかりと向き合った上で、都心地区にどう誘導していくか、言い換えれば「開発を都市の中でどう受容していくか」という話にしていくべきだろう。

 

手前みそだが、富山市の郊外拡大にしても、結局は都心エリアが飽和してしまい、開発圧力を都心で受けきれなくなったからではないか。

www.tefujita.com

 

開発圧力は都市の活力でもあるので、これを「悪者」として封じ込めるのではなく、都市がどう受け入れるかということ。どうやって「狙ったところ」を開発してもらうか。規制強化だけでは都市の新陳代謝は進まず、老朽化が進んで都市が老衰してしまう。

 

わかりやすい「悪者」をつくったところで社会は良くならない。