【読書記録】NETFLIXの最強人事戦略

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最近よく広告を目にするNETFLIX社。その元人事責任者パティ・マッコードが同社の創業から急成長の過程で取り組んできた人事施策を紹介した本がこのNETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築くだ。

 

会社は、顧客を喜ばせる優れた製品を時間内に提供できるように努めることを除けば、従業員に何の義務もない

 仕事の満足度は、グルメサラダや寝袋やテーブルサッカーの台とは何の関係もない。仕事に対する真のゆるぎない満足感は、優れた同僚たちと真剣に問題解決にとりくむときや、懸命に生み出した製品・サービスを顧客が気に入ってくれたときにこそ得られる。

タイトルと表紙を見るとハウツー本っぽい雰囲気もあるが、著者の提言は、巷の"イケてる"ベンチャー企業やIT企業が行っている施策を一刀両断するものだ。

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

 

 

福利厚生を手厚くしたところで、従業員が真剣に自己の職務・職責に向かい合わなければ意味がない。NETFLIX社では以下のような行動規範を定める。(強調筆者。以下同じ)

●マネジャーは自分のチームだけでなく会社全体がとりくむべき仕事と課題を、チームメンバーにオープンにはっきりと継続的に伝える

●徹底的に正直になる。同僚や上司、経営陣に対して、時機を逃さず、できれば面と向かって、ありのままを話す

●事実に基づくしっかりした意見をもち、徹底的に議論し検証する

●自分の正しさを証明するためではなく、顧客と会社を第一に考えて行動する

●採用に関わるマネジャーは、チームが将来成功できるように、適正なスキルを備えたハイパフォーマーをすべてのポストに確実に配置する

 

過度な福利厚生をしないというのは、決して従業員を大事にしないのではなく、従業員が真剣に仕事に向き合える環境を提供することに注力するということだ。それは、大掛かりな仕組みや金のかかるイベントではなく、経営陣と従業員が、製品・サービスを顧客に提供するという1点において真摯に向き合うというもの。基本的なことだが、それを突き詰めて実践できている企業・チームはなかなかないのではないかと思う。

▼どんなレベルの従業員も、自分とチームの任務だけでなく、事業全体のしくみや会社が抱える課題、競争環境などを大局的に理解することを望み、必要としている。

事業のしくみを正しく理解することが、何よりも大切な学習だ。それはどんな 「従業員の能力開発」研修よりもためになるし、おもしろい。この知識が、高い業績と生涯にわたる学習の起爆剤になる。

経営陣と従業員のコミュニケーションは、本当の意味で双方向でなくてはならない。リーダーが質問や提案を歓迎し、気軽に意見をいい合える雰囲気づくりに努めれば努めるほど、レベルにかかわらずすべての従業員が、驚くようなアイデアやひらめきを与えてくれる。

従業員に十分な情報を与えられたかどうかを、どうやって判断するか? 私の基準を教 えよう。休憩室でもエレベーターでもいい、従業員を呼び止めて、「うちの会社が今後半年間にとりくもうとしている最重要課題を5つ挙げてみて」と尋ねる。その人が間髪入れ ずに1、2、3、4、5点を、できればあなたが説明するときに使った言葉のまま、理想をいえば同じ順序で挙げることができれば、合格だ。もしできなければ、ハートビートはまだ十分強いとはいえない。

 

また、人材採用についても示唆深い指摘がある。 企業にも従業員にも向き不向きや好みがあり、絶対的に優位な企業があるわけでも、すべての企業にとって最適な人材がいるわけではない。それぞれの企業が今いる成長段階に応じて適切な人材を配置すべきで、また、従業員も自分の能力に最適な企業を探せばよい、と著者は考える。

彼がいつも同じ不満をこぼし、変化を腹立たしく思っていることがわかったから、あるとき聞いてみた。

「ねえ、なぜものごとが変化しているか知ってる?」

彼は答えた。「どうしてさ?」

「そりゃ、成功しているからよ!私たちが何をめざしているか知ってる? "グローバル企業"になることよ!」

筋金入りのスタートアップ野郎にはショッキングな言葉だったにちがいない。

特定の成長段階の組織に向いている人や、それを好む人は、その時期の組織に特有の課題や環境をもつ別の新興企業に移った方がいいのかもしれない。

グーグルにとっては、優秀な人材をできる限り多く採用して、必要な資源がすべてそろった環境に置き、アイデアを山ほど出してもらい、そ こから最高のアイデアをすくいとる、という戦略がとても合っている。グーグルのリー ダーたちは、事業を推進する戦略をたくさんもっているから、とにかく数を重視する。

これに対して、ネットフリックスでは基本的に一つのことしかやっていないから、その一つのことのなかの職務を果たすための適正なスキルと経験をもつ、適正な人材が必要なのだ。

 

十分な報酬で最適な人材を集め、企業の成長段階に応じてリリースしていくというスタイルは、確かに企業経営上、極めて合理的だと感じた。解雇規制が厳しく、従業員も長期雇用を期待している日本で同じことはできないだろうが、企業の規模や従業員の能力が変化していく中で、最適な人材や最も能力を発揮できる企業像は変わり得るということは、管理運営上よく理解しておく必要があるだろう。

 

ともすると、従業員を「大切にする」ことが、人材確保や労使対立回避のために「甘やかし」や「見て見ぬふり」になりがちだ。企業の本来の目的である事業に焦点を当てることで、健全な関係を構築するというのは、"働き方改革"が喧伝される今こそ、立ち返るべきところなのではないだろうか。

 

余談だが、このブログの引用部分は該当ページをiphoneのカメラで撮影してGoogle DriveでOCRして読み込んだもの。縦書きでも精度高くて素晴らしい。