富山市郊外のコミュニティバス運行が打ち切られるわけですが

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以前から耳には入っていたのですが、先日折込チラシが入ってまして、富山市婦中町を走っていた市営のコミュニティバスが年度いっぱいで廃止になるとのこと。

 

4月からは自治振興会が運行主体になって「自主運行バス」として運行することになるようです。現在のコミュニティバスは3系統を3往復していますが、4月からはルート見直しで4系統に再編したうえで2往復ずつに減便する。また、中山間地域はデマンドタクシー化する。

 

富山市内には婦中町以外にも複数コミュニティバス(一部デマンドタクシー)がありまして、行政的なデマケによると、「平野部は民営・中山間地域は市営」ということになっているようです。婦中町は平野部で他の地域と平仄取れてないということで今回打ち切りとなる。

 

減便は補助制度や地域特性を踏まえると必然だった

自主運行バス化に際して3便から2便にサービスレベルを下げているわけですが、これは市役所からの補助金が「シビル・ミニマム(最低限度の生活水準)は1日2往復」とされており、100%補助が出るのが2便までだからと思われます。今まで通り3便運行すると、数百万円の赤字を住民が直接被る話になるので、確実に手出しがない範囲だけでしかやらないという判断でしょう。苦肉の策という感じです。

 

他地域のコミュニティバスでは、住民から協賛金をあつめてサービス水準向上に使用するところもあるようですが、婦中町はコミュニティバスがなくなって困る層(中山間地域・郊外の農業エリア)と全然困らない層(鉄道駅近傍・民間バス路線沿線)が地理的に分断されていますし、ここ20年ほどの間に周辺地域から転入してきた若年世代と昔から婦中町に住んでいる純地元民もいて、地区間対立や世代間対立を考えると合意形成困難と判断したのでしょう。そういう意味では制度上の必然的な帰着だったのかもしれません。

 

ただ、100%補助の範囲内でやるということは実質富山市が財政負担しているのと同じなわけで、結局のところ、結果的に市営バスを1往復減らすのとやっていることは同じじゃないのか?という気がします。

 

「コンパクトシティ」と郊外のコミュニティバスの関係

コンパクトシティ政策では「お団子と串」というキーワードがよく出てきます。これは、公共交通(≒鉄道、路線バス)の運行ルートを「串」、そこに連単する都市機能を「お団子」に見立てた概念で、富山市のコンパクトシティ政策の基本的な考え方です。

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 この考え方の「お団子」のサイズは、徒歩圏がベースですから、なるほど郊外のコミュニティバスはまったく概念の枠外なのかもしれません。既存の公共交通(≒鉄道、路線バス)から外れたところに住む人間はコンパクトシティ政策の敵ですから、そんな奴らに税金投入するものかは、というのが富山市役所のスタンス・・・というと意地悪な見方でしょうか。

 

ただ、現実をみれば、婦中町のお爺さんお婆さんたちは総曲輪フェリオ(富山市の中心市街地の再開発ビル)で日用品買ってないわけですよ。みんなファボーレ(婦中町にある富山県東部最大のショッピングモール)に行くわけ。だったら、めったに行かない中心部に行く「串」よりも、日々の地域内での経済活動の足になる地域内交通の方が本当は大事なんじゃないですかね?

 

婦中町のコミュニティバスが通るエリアなんてほとんど農地ですから、そこに住んでいる人は殆どが昔からその地区に住んでいる農家の人です。長きにわたって土地とともに生活してきたわけで、たとえ行政サービスのレベルを下げたところでどう考えても「まちなか」には移住しない・できない層でしょう。政策的なインセンティブにはならない。むしろ、ますます自動車化するようになる。現に婦中町には4万人以上が住んでいるわけで、ここを交通政策・都市政策から切り捨てたところで何も改善しません。

 

市営やめるのはいいけど説明責任は果たして

一方で、コミュニティバスの利用少ないのは事実なので、今のまま漫然と続けるべきでないというのは真実だと思います。運行やめる、減便するというのは、今の実態からすると致し方ない部分もあります。

 

ただ、民間路線バスが不採算を理由に撤退して自主運行バスにするならわかりますが、そもそも不採算前提に行政がやっていたコミュニティバス事業なのに、それを一方的に打ち切って地元住民が自主運行バスにするなんて、普通に考えて順番おかしいと思いません?

 

しかも本件は報道ベースで何件か取り上げられたぐらいで、地域に対する情報提供がほとんどない。年末に自主運行バスの運営委員会が立ち上がったらしいですが、行政から住民に対する情報発信は、私が把握している限りではまったくのゼロ。すごい不利益変更起きるわけですから、富山市として婦中町の地域内交通どうするつもりなのか、グランドデザインをしっかり示してほしい

 

市営じゃないからできることもある・・・かもしれない

今回、1点だけよかったことを言うと、音川地区(婦中町の中山間地域)を路線バスからデマンドタクシーに切り替えたことです。コミュニティバスで100%人口カバーするのは不可能なので、疎なところをデマンド化することで、コスト抑えつつサービスレベルを維持できるかもしれません。

 

これまでは市営だったことで良くも悪くも「平等」「公平」でないといけなかったことが、そしてそれによって不合理になっていたことが、いろいろな面で合理化できるようになるかもしれません。なぜか合併前の旧市町村エリア内で均一にしか運行してなかったバスルートも実需に応じて柔軟に設定できる可能性もあります。「行政から運行経費をもらいつつ、運営は行政的な縛りがない」というのは、結構なメリットではないかと思います。

 

なんだかんだいっても、婦中町のコミュニティバスはあのままでは利用者数の観点からみて持続可能な形ではなかったので(もちろん、新しい運行計画も課題多いと思いますが)、これを機会に、住民視点・民間視点でちゃんと持続可能なものにできるようになればいいなと思います。