公的病院の再編統合は単なる”金勘定の問題”ではないよという話

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昨秋の話になるが、厚労省が開催している「地域医療構想に関するワーキンググループ」の第24回目で、病院のあり方について「具体的方針の再検証を要請」すべき医療機関が公表された。全国で424の公的病院が指名され、地方紙を中心に一部メディアが大騒ぎになった(その後、データが精査され、最終的には440病院となっている)。

 

厚労省が個別医療機関を名指しするに至るまでには長年の議論の積み重ねがあり、病院業界にいる人間にとっては(公的・民間を問わず)病院のダウンサイジングや再編の必要があるというのは概ね業界のコンセンサスになっていた。また、この検証の動き自体も、かなり前から同WGで議論されており、「やっと公表されたな」という印象だった。

 

ただ、WGの資料がここまでマスコミに注目されてしまったのは厚労省的にも予想外だったようだ。公表の翌日(27日)に医政局名で 地域医療構想の実現に向けてと題して以下のフォローの声明を追加で発表するなど、厚労省の動揺が窺える(強調は筆者による)。

今回の取組は、一定の条件を設定して急性期機能等に関する医療機能について分析し、各医療機関が担う急性期機能やそのために必要な病床数等に ついて再検証をお願いするものです。したがって、必ずしも医療機関そのものの統廃合を決めるものではありません。また、病院が将来担うべき役割や、それに必要なダウンサイジング・機能分化等の方向性を機械的に決めるものでもありません。 

今回の分析だけでは判断しえない診療領域や地域の実情に関する知見も補いながら、地域医療構想調整会議の議論を活性化し議論を尽くして頂き、2025 年のあるべき姿に向けて必要な医療機能の見直しを行っていただきたいと考えています。その際、ダウンサイジングや機能連携・分化を含む再編統合も視野に議論を進めて頂きたいと考えています。

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八ッ場ダムを安易に”物語”化するのはやめよう

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2019年の台風19号は豪雨、暴風、高潮等、様々な要素が短期間に来襲し、しかも東海~関東~東北と広範囲にわたって被害をもたらした。

特に被害が大きかったのは洪水で、47河川で堤防決壊、決壊には至らなかったものの堤防を越えて水があふれだす「越水」は181河川で発生した。

昨年の西日本豪雨に続く広範囲な水害で、今後の地球温暖化も考えれば、ソフト・ハード両面での備えがいかに重要か、改めて痛感させられる事態となった。

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無給医問題が地域医療再編の端緒になる

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ここ10年ほど、病院業界では急性期病院をどう集約・再編するかが注目されてきたが、これまで色々な政策誘導が行われてきたものの、なかなか進んで来なかった。

 

先日、大学病院での無給医*1の存在を文科省が認めたことが話題になったが、急性期病院の集約と再編が、2025年問題でも地域医療構想でもなく、無給医問題から動き出すのではないかという気がしている。

 

*1:大学院生や専門医を目指す後期研修医による診療を「自己研鑽や研究目的の一環で診療を行っている」として、業務とみなさず給与を払わないのが常態化していた

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「『居心地が良く歩きたくなるまちなか』からはじまる都市の再生」報告書で感じたこと

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先日、都市局がやっていた「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」の中間とりまとめ報告書が公表された。

2点気になったことがあったので、備忘録的に書いておきたい。

 

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「学校の働き方改革」とは教育の地域への開放

ご縁で教育系の非営利法人の活動に参画させてもらう機会があり、そこから派生して「学校の働き方改革」というものがあることを知った。

 

この学校の働き方改革というもの、医療業界の「医師の働き方改革」ととても文脈が似ている。具体的には、

  1. 社会から全人格的な投入を期待される(休日も仕事にコミットする)
  2. 正規の労働時間以外の活動があるのが当然とされる文化
  3. 属人的・職人的な仕事の仕方が主流で、組織分業が進んでいない

などである。

 

学校の働き方改革が進まない理由

一方、医師の働き方改革は医療機関により多少の温度差はあるものの、業界全体では改善が必要というのがコンセンサスになっているし、具体的な取り組みも進んでいるという点で学校のそれに比べると一歩も二歩も先をいっている、とも感じた。

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自治体病院が破綻する日

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旭川市が運営する旭川病院で、赤字を理由に職員給与の削減が行われるという報道があった。一般に、自治体病院は一般会計からの繰入れで赤字が補填されるため、職員給与に手を付けてまで収支改善しようとするケースはあまり聞いたことがない。

北海道旭川市は11日、市立旭川病院の医師や看護師らの給与を2年間、削減する方針を決め、関連議案を定例市議会に提出した。同病院は深刻な赤字が続き、経営改善が喫緊の課題だ。給与削減で年約1億3千万円の節減を見込む。

www.asahi.com

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「会社が合わなかったらすぐ辞めていい」系の言説について

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2019年度が始まりました。多くの企業で新入社員を迎え入れたことと思います。これから、研修を終えて新入社員の方たちは職業人として仕事に取り組んて行くことになります。

 

毎年この時期、新入社員向けの「つらかったら入社後すぐに辞めてもいいんだよ」的な言説がSNSを中心に散見されます。これについては、いち人事担当者としていろいろ感じるところがあるので、今回は私の考えを整理してみたいと思います。

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上小阿仁村はもうちょっと医師を守る努力したほうがよいのでは

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職業柄、気になる記事があったので、紹介します。

秋田県(人口約2300人)で唯一の医療機関、村立上小阿仁国保診療所の医師の柳一雄所長(80)が、患者を診察せずに処方箋(せん)の発行を看護師に指示していたことが15日わかった。医師法は無診察での処方箋の発行を禁じている。

www.huffingtonpost.jp

 

医師法(昭和二十三年法律第二百一号)

第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。(ただし書き略)

上記のとおり、確かに医師法では無診察での処方せんの交付が禁じられており、事実であれば法令違反となる可能性が高い。

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