ディーン・ウィリアムズ著、「リーダーシップ 6つの試練」(原題:Real Leadership)を読んだ。

- 作者: ディーンウィリアムズ,Dean Williams,上野真由美,中辻綾太,開発徹,山崎貴弘
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 単行本
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2011年9月に日本語訳が発刊された本で、世の中一般に言われている「信念を持つ」「道筋を指し示す」といったリーダーシップの"あるべき論"を「偽のリーダーシップ」と喝破し、真のリーダーシップ(Real Leadership)について論じている。
著者は、一般に流通しているリーダーシップの概念
◆信念を持つ
◆ビジョンを明確に説明する
◆道筋を指し示す
◆忠実なフォロワーを生み出す
といったものは、リーダーの取りうる選択肢ではあるものの、これらの要素が必要以上に強調された結果として「偽のリーダーシップ」が生まれ、以下のような害が発生すると指摘する。
◆支配に執着する。
◆人々を真の作業に関与させない。
◆安全地帯を超えて解決策を見つけようとしない。
◆自分だけが心理を理解していると確信する。
著者の指摘で特に共感するのは、これらの一般的なリーダーシップの概念は、現代社会が取り組むべき課題を十分にカバーできていない、というもの。
確かに、「リーダーはビジョンを示すことが大事だ」というが、強力にビジョンを示すことがかえって反発を呼んでしまう場合もあるし、逆にリーダーへ過度に依存してしまい組織の活性を下げる場合もある。総論としては賛成できるが、個別の組織の置かれた状況によっては鵜呑みにできない。
これに対し、著者はリーダーシップが直面する試練を6つに類型化している。それぞれの試練に対して、求められるリーダーシップの在り様は少しずつ異なることが説明されている。
活動家型試練◆集団や特定のグループは、ある種の現実に直面することを拒否しているか?
発展型試練◆現在の問題や将来の需要に対応するための能力やリソースが不足しているか?
移行型試練◆新しい現実に対応するため、集団の文化は変化を求められてるか?
維持型試練◆危機に晒されている現行の価値観や行動様式を維持する必要はあるか?
創造型試練◆新しい行動様式やプロセスを創造する必要はあるか?
非常事態型試練◆集団が一触即発の状況に陥る可能性はあるか? 集団が保有する価値は危機に晒されているか?
リーダーとはどうあるべきか?という問いはどんな組織でも出てくると思うが、組織にはいろんなステージがあり、直面している課題の内容・質は全く異なる。その一方、その”あるべき論”は画一的になりがちだ。
企業でも、創業期、成長期、成熟期、衰退期でやるべきことが異なる以上、求められるリーダーシップも異なるべきだ。製品のライフサイクルだけでなく、消費者のニーズの変化、社内の技術水準、人事政策・・・様々な要素が絡み合って企業の"試練"が生まれる。
この本は「リーダーシップといってもケースバイケースだ」という身も蓋もないことを言っているに過ぎないのだが、その"ケースバイケース"を類型化し、それぞれのケースに求められるリーダーシップを考える補助線を引いてくれる。
自分の会社、あるいは部署が今どういう試練にあるのか。また、それを乗り越えるにはどういうリーダーシップが求められるのか。
じっくり考えてみると面白い。
この本、実は発刊直後の2011年に買ったものの、忙しさをいいわけに4年も積ん読状態だった。ようやく本腰を入れて読み始めたが、もっと早く読めばよかったと非常に後悔した一冊。

- 作者: ディーンウィリアムズ,Dean Williams,上野真由美,中辻綾太,開発徹,山崎貴弘
- 出版社/メーカー: 英治出版
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