前回のブログ、いろんな方に紹介していただき、BLOGOSやアゴラに転載されてないのに意外とアクセスが多く、反響に驚いている。
前回、地域別に世代の偏りがある原因について、持ち家率の高さが関連しているのでは?という仮説を立てたので、違う切り口からこれを考えていきたい。
今回は、国勢調査の居住期間の統計を使用。「20年以上居住している」又は「生まれた時から居住している」と回答した人数の比率(長期居住比率)を500mメッシュで推計した。
この比率が高いということは、単に地域に人が定着しているというだけでなく、外から人がなかなか入ってこない地域であるということも示している。
中山間地や田園地帯は人が固定化
結果は下図のとおりで、顕著に地域差が出ている印象。
これだけだといまいち特徴がわかりにくいので、国交省が作成している、衛星写真から土地利用を判断したデータを重ね合わせてみる。100mメッシュで土地利用を区分したもので、青くなっているところは建築物が多い土地ということになる。
この2つを重ね合わせてみると、建築物の連坦している、いわば都市化したところは長期居住比率が低いことがわかる。逆に、建築物が少ないエリアは総じて赤く、新しく外から人が入ってきていない。中山間地域では特に顕著だが、平野部でも建築物の少ない場所≒郊外の田園地帯は長期居住比率が高く、人の出入りが少ない。
ドーナツごとにも居住期間に違い
前回の分析では、富山市を4つのドーナツに区分して議論したが、同じように4つのドーナツを上からかぶせてみると、長期居住比率には概ね以下のような傾向にあった。
- 中心市街地ドーナツ ⇒ 40~60%
- 近郊ドーナツ ⇒ 40%以下
- 郊外ドーナツ ⇒ 60%~80%
- 中山間地ドーナツ ⇒ 80%以上
中山間地ドーナツと郊外ドーナツは平均年齢も高かったが、居住期間も同様に長く、世代が固定化されていると言えそう。イメージとしては、親世代が残り、子世代が首都圏や市内近郊に転居していったのに、代替となる若い世代が入ってこなかった結果、居住期間が長い世代だけが残ってしまった、ということではないかと思う。
逆に、中心市街地ドーナツは思ったほど高い割合とはならなかった。ただ、前回指摘した通り、中心市街地は実際には顕著に若者が少ないので、他の統計(建物の種類や転居の状況など)とも照らし合わせながらもう少し分析が必要。
意外だったのは、近郊ドーナツの長期居住比率の低さ。大学生の多い五福地区や新興住宅地の鵜坂地区・速星地区はある程度予想していた。それよりもひと世代ふた世代前に開発された堀川地区や山室地区などは、もう少し赤くなるのではと予想していたが、予想外にドーナツ全体で長期居住比率が低く、人の出入りがあるようだ、という結果になっている。
近郊ドーナツの長期居住比率が低いのは、たまたま都市開発のタイミングで20年に満たなかっただけなのか、それとも人の流動性に違いがあるのか。将来の都市構造を考える上で重要と思われるので、ここも深堀していきたい。